後藤徹氏の兄らの準備書面(3)
後藤徹氏の兄らの準備書面(3)の全文を掲載する。
この準備書面は、統一協会の反社会性についての記載が多くをしめている。
統一教会員の読者にとっては、耳の痛い内容であろうと思う。
明らかに事実誤認と思われる内容については、注釈をつけた。
第1 統一協会の反社会性について
1 統一協会の概要
(1)世界基督教統一神霊協会(以下「統一協会」という)は、1920年に今の北朝鮮で出生した文鮮明が1954年5月に韓国で創立した。その教えは、「統一原理」と呼ばれ、「原理講論」と言う本に著されている。
文鮮明は日本の専門学校である早稲田大学附属高等工学校で学んだ後、今の北朝鮮に帰省し、社会秩序を乱した罪で北朝鮮で1948年に実刑判決を受けた。朝鮮戦争の動乱期に韓国に逃走した後にも、同種事件で1955年にソウルで逮捕されている。
これらの判決や逮捕は、文鮮明が多くの女性と性関係を持ったことが理由と言われている。
文鮮明は1960年に現在の妻韓鶴子(1944年生まれ)と、法律上は2度目の結婚をした。韓鶴子との間には12人の子がいる。その長男が文孝進である。彼は統一協会の最高幹部の娘である洪蘭淑(ホンナンスク)と結婚したが、洪は孝進の虐待に耐えかねて自宅を出て、離婚した。1998年秋、洪はIn the Shadow of the Moons(日本では「わが父文鮮明の正体」)という手記の書籍を書いて、同人が自ら体験した文鮮明一家の家庭崩壊の実態や統一協会の組織の事情について赤裸々に述べている。なお、長男孝進は2000年3月17日<注1>に死去している。
(2)韓国で始まった統一協会は、1958年に日本で布教を始めた。
統一協会は、1961年に成立した朴政権に反共活動の面で利用されるようになり、63年に韓国で財団として認可され、64年に日本で宗教法人として認証された。それ以来、統一協会は、国際勝共連合の実質的母体として韓国や日本の反共政治組織に利用されるようになったのである。1974年にニクソン大統領と文鮮明が会った頃からは、米国でも様々な政治工作を展開してきた。1979年に米国議会で問題になったコリアゲート事件では、統一協会幹部の朴晋煕が米国の議会で証言を求められたこともある。
アメリカでは1982年に文鮮明が提唱して設立した日刊紙Washington Timesを中心に、言論界や政界に一定の影響力をもつようになった。しかし、アメリカでは文鮮明とその側近の神山威(元日本統一協会会長)の2人が脱税で実刑判決を受け、1984年7月から1年余り下獄している。
(3)韓国では、日本から長期間にわたって送られ続けてきた資金をもとに統一重工業や一信石材、一和、世界日報などの企業が設立運営されてきた。統一協会傘下の統一維持財団は韓国に40ある財閥のひとつと言われている。韓国では、文鮮明は宗教家としてよりも経済的な成功者として知られている。
しかし、1997年からの韓国経済の破綻と、日本の統一協会組織からの送金の減少のため、韓国の統一協会系の企業のほとんどが事実上倒産しているとも言われる時期があった。
(4)日本では、1964年頃、信者になった若者たちの家出と学業放棄が続出した。親たちのいかなる説得も涙も通用せず、信者になった若者は、統一協会に反対すると実の両親さえ自分の本当の親ではないとして、サタン呼ばわりした。このため、親たちはなすすべもなく失望と落胆の世界に追い込まれた。統一協会はこの頃から、「親泣かせの原理運動」としてマスコミに何度も何度も登場し、それ以後何かと物議をかもし出してきた。
1975年頃から大理石壷や人参液を霊感商法の手口を用いて不特定多数の市民に高額価格で売って潤沢な資金を手にするようになった。1975年から約10年間余りにわたって、日本の統一協会は、文鮮明のもとに、毎月50ないし100億円の資金を送りつづけたと多くの中堅信者が述べている。今でも、日本人信者は毎年数百億円の資金を文鮮明に送りつづけており、文鮮明の日本組織への送金の指示は極めて厳しいものでありつづけた。
文鮮明は、「エバはアダムにつかえなければならない。だから、女性は男性につかえなければならない。日本はエバ国家、韓国はアダム国家である。だから、日本はエバ国家としての使命がある」などと説教し、資金的にも、人材面でも韓国の統一協会組織や文鮮明の活動を支える責任があると述べてきた。このため日本人信者はその責任を必死で果たさねばならないというのである。
このようにして集められた資金を使って、文鮮明やその側近らは、ソ連のゴルバチョフや北朝鮮の金日成、更には中国の要人などと会っている。文は朝鮮半島の南北統一に寄与したいと述べているが、本音は金目成のように文鮮明国家を創立し、その支配者になりたかったと評されている。南米のブラジルに広大な土地を買って、そこに地上の楽園を造ると称して、日本人信者に協力するよう指示していた時期も長期間続いた。
2 日本での被害
(1)1997年9月18日の最高裁判決で、統一協会の法的責任が確定した事例(原審は福岡地裁平成6年5月27日、判例時報1526.121)は全国で発生している多くの被害の中でも極めて典型的な事例である。
1987年8月に夫が死去した46歳のA女は、娘と2人で失意の生活をおくっていた。1988年2月、統一協会の信者Bは、戸別訪問をして知り合ったA女を、統協会<ママ>信者が運営している絵画展に誘い、担当信者らがしつこく勧めて22万円の絵画をA女に買わせた。BらはA女方に再三訪問して、めったに会えないえらい先生に家系図を見てもらうよう勧め、霊場に連れ出した。そこで先生(実は信者C)が、「あなたの夫が地獄で苦しんであなたの救いを求めている。すべてを投げうって天にささげる気持ちで献金しないと娘も不幸になる」などと脅して長時間説得し、結局500万円を献金させた。BらはA女をその後もビデオセンターに通わせて、統一協会の教義を教え込み、霊界の恐怖をうえつけて、A女に弥勒像の代金として700万円、印鑑3本セットの代金20万円を支払わせた。その上で別の先生役の信者A女を説得して、A女の夫の生命保険3000万円も「今こそ天にささげなければならない。夫も霊界でそれを望んでいる」などと述べて、献金させた。
このような手口による資金集めは、霊感商法と言われている。
(2)このような事件は決して偶発的なものではない。奈良地裁平成9年4月16日判決(判例時報1648.108、解説は民事法情報132号48頁)で認定しているとおり、日本の統一協会組織において、システム化された献金勧誘活動であって、長期間全国で展開されているのである。
信者のこのような献金勧誘行為が違法であり、統一協会に使用者責任があるとする判決は、前述した福岡地裁、福岡高裁(平成8年2月19日判決)、最高裁判決の外、東京地裁平成9年10月24日判決(判例時報1638.107)、東京高裁判決平成10年9月22日、最高裁判決平成11年3月11日、高松地裁平成8年12月3日判決があり、すでにこのような判例の考え方は確定したといえる。
更に前述した奈良地裁判決では、システム化された献金勧誘のシステム・手口自体が違法であるとして、統一協会としての民法709条の不法行為責任を認めるという、より実態に則した判断をしている。
また、平成11年3月23日言渡の仙台地裁判決では、献金勧誘行為の外、信者が運営している会社(解散している)の人参液販売についてまで、統一協会の使用責任者<ママ>を認めている。
問題は、統一協会がこのような相次ぐ判決を無視して、文鮮明の献金指令に応じるため、長期間にわたって全国で同様の手口による印鑑・人参液、風水などを利用して、四神(天の四方の神)すなわち東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武(亀と蛇)と呼ばれる水晶の置物等の販売や、違法な献金勧誘行為をつづけてきたことである。
前述した福岡地裁判決の事例のように、統一協会による金銭被害は1回で終わらない。まだ財産があり、家族の悩みや将来の不安があってつけ入ることができると判ると、しつこくつきまとって、喫茶店やサロンのような形状に造られているビデオセンター(全国各地の市街地に数百ある)に通わせて、統一協会の教義であることを隠して、その教義を教え込んでいく。こうして「真理」を学ぶことで初めて先祖の因縁から解放されると言われ、スタッフの信者にほめ上げられ、親切を押しつけられると、人の良い市民は容易に断れなくなってしまうのである。
(3)しかし、こんなA女の加害者側になったBのような立場の信者たちも、ある意味では統一協会による被害者である。
その典型例は次のとおりであり、このような形でほとんどの信者が違法行為に手を染めている。
甲は25歳の看護師で、毎日が忙しく、心に満たされないものを感じていた。アパートに帰ってもテレビを相手に1人寂しい夕食の毎日。駅頭で青年の意識アンケートに答えたのがきっかけでビデオセンターに通い始めた。聖書の話が出てきたが、スタッフは「宗教とは関係ない」「人生について勉強するところ」とごまかした。スタッフらに励まされて通ってスタッフと親しくなったころを見計らって、そこが悪名高い統一協会の勧誘施設と知らされた。しかし、その時には、「でもまじめで親切だし、うそを説明しているのでもないから、もうすこし通ってみよう」と考えるようになっていた。日本の若者は宗教についての教育をほとんど受けていないし、ふだん触れる機会もないので、その教義の矛盾や聖書のごまかしに気付くことができないのである。
甲は、統一協会が勧誘目的で運営するビデオセンターに通うよう執拗に説得されて、毎日帰宅が遅くなり、その後修練会への参加のため職場を休むことも増え、「献身」を勧められた。こうして甲は退職し、信者が共に住むホームに転入して共同生活を始めた。献身前には統一協会組織で売っている宝石、着物、絵画、人参液などを購入するためにクレジットやサラリーローンから借金をさせられている。退職金も全て統一協会に献金してしまった。アパートの家財道具も統一協会のホームに寄付した。甲の両親が心配して連れ戻すのを防ぐためとして、甲は幹部が指示するままにホームを移り住みつつ、連日物品販売や伝道(ビデオセンターへの誘い込み)に睡眠時間を惜しんで奔走する毎日を送りつづけた。そのような活動をすることが本人やその家族や日本人が地獄に堕ちて苦しまず、メシヤによって救われる唯一の方法だと信じ込まされているのである。甲は毎月15,000円の小遣いをもらうだけで、休日は月に1日だけ。甲は、合同結婚式に参加して、真(まこと)のお父様(メシヤ文鮮明)が選んでくれた男性と理想の家庭をつくることだけを夢見るようになっていった。
(4)信者勧誘や献身者の生活管理の問題
ア 日本の統一協会には、この甲のように、睡眠時間以外の全ての時間を統一協会の指示通り伝道や資金集めの活動に費やしている者(献身者と称している)が数千人いる。
また、Aのように、家庭人だったり、他に仕事をもちながら組織の指示で活動する信者が数千人いる。
最近では甲のような献身者が減り、仕事をもって毎月多額の献金をさせられている信者が増えているようである。
また、合同結婚式で韓国人男性とカップリングされたことから、韓国の統一協会を支える任務をもたされて、韓国内で活動したり、家庭をもって慣れない生活を営んでいる日本人女性が約6000人余いる。そのような日本人信者女性と、韓国人男性との間の子が韓国に1万人以上いるのが実情であり、その将来も心配されている。
イ 勧誘活動の最大の問題は、統一協会であることはもとより、宗教であることさえ隠してビデオセンターに通わせ、先祖の因縁や将来の不幸、霊界で永遠に地獄で苦しむなどの不安をあおってやめられなくしていく手口にある。統一協会に反対する家族をサタンと決めつけたり、サタンにあやつられていると非難して家庭を崩壊させ、24時間文鮮明のために働くロボットにしていくシステム化された「教育」の実態こそ最大の問題である。
ウ 前述した甲のように、違法な資金集めをしても、地上天国実現のために正しいことをしていると思い込むようになっているのである。ストイックなホームでの共同生活では、情報も感情も思考もコントロールされているので、文鮮明やアベルを疑うこと自体が罪だと考えるようになっている。統一協会をやめると永遠に地獄で苦しむことになるし、先祖や子孫を不幸におとし入れるだけでなく、日本自体が沈没したり、滅び去ると思い込まされているので統一協会をやめられないのが実情である。
エ こんな信者たちの行為により、毎年多数の霊感商法の被害者が出ている。1987年に霊感商法の被害者を救済し、被害を防止するために全国の約300名の弁護士で組織された全国霊感商法対策弁護士連絡会の集計では、1987年から2010年までの約24年間で、合計32,283人、被害合計額1116億8188万7329円の被害相談があったが、この金額でもまだ全体の被害の氷山の一角でしかない。
統一協会には、「万物復帰」という、世の中の全ての財産は本来メシヤである文鮮明に使ってもらうためにあるという教義かある。しかも文鮮明がエバ国家である日本の統一協会に対して高額の献金を指示しつづけている。このため、どんなに社会的に批判されても霊感商法の手口による資金集めを止められないのである。
現在でも信者らは文鮮明の法外な額の献金指令を達成するため、短期間のうちに多額の献金を指示されたり、様々な名目での献金を指示されている。このため、親族や友人、知人に嘘の口実で借金して、これを返そうとしない信者も多い。
(5)警察による相次ぐ摘発
このような統一協会による違法な資金集め活動については、被告宮村答弁書における主張を援用するが、同答弁書において紹介されたように、警察による摘発がなされ、起訴された事件については全件有罪となり、控訴されることなく確定している。
(6)合同結婚式や海外宣教の問題
ア 統一協会は、92年8月、95年8月、97年11月、98年6月、99年2月など頻繁に合同結婚式をしてきた。日本人の参加者は参加する度に1人140万円の献金と30万円の経費を出すように指示されてきた。99年2月には一般では誰も信じていないが3600万組の男女が参加したと宣伝した。それ以降も繰り返し現実ばなれした参加カップル数を標榜している。いずれにしても、参加者の献金(日本人は1人140万円プラス経費分)は貴重な収入源になっており、合同結婚式の派手なイベントは勢力誇示の機会となっている。
イ 信者たちは、原罪をかかえた自分が唯一救われる方法がメシヤである文鮮明の祝福を受けて、メシヤが選んだ異性と家庭を持って子をつくることと信じ込まされている。その参加を認められるよう組織の言いなりに伝道や資金集めに努力し、参加後も統一協会の指示通り活動しつづけるのである。そして合同結婚式に参加しても、統一協会が認めるまで入籍させないし、手も握らないよう指示する。勿論家庭を持つことも認めない。
ウ しかし、このような若い信者たちが仮に婚姻をしても、本当に自分の意思で相手を選んだ有効な婚姻とは認めがたいのが実情である。
最高裁判所は1996年4月25日、合同結婚式に参加して入籍した後脱会した日本人女性と日本人男性信者の入籍は有効な婚姻だと認められないと判決した。
この一審は福岡地裁平成5年10月7日判決(判例時報1483.102)である。この外、入籍した後脱会した元信者による婚姻無効の確認を求める裁判や家事審判では、これまで約50件ほどがその主張通り認められている。
しかも、仮にその2人が実際に家庭を持つよう指示されたとしても、様々な事情で夫婦関係や家庭生活がうまくいかないことが多い。現に、福島県では韓国人男性が日本人の妻の母親を、愛知県ではフィリピン人男性が日本人の妻を殺害してしまった事件まで起こっている。
エ しかも、家庭を持った後であっても、統一協会の組織活動にかり出されて、平穏な家庭生活を営めない夫婦が多いのが実情である。日本人女性信者約3000人が世界各国に伝道要員として派遣されて、統一協会のダミー組織である世界平和女性連合のボランティアだと名乗って、正体を偽って市民に近づき、伝道活動をして、合同結婚式への参加を募ってきた。その女性が家庭をもっている場合には、幼い子が老祖父母や夫の手に委ねられていることもあった。
(7)加害者になることの問題
ア このように、信者になった者は、自らの財産を喪失し、自らの人生を主体的に選択することを放棄させられ、統一協会の指示通りに活動し、生活するようになるという面で被害者でもある。しかし、信者である以上、資金集めの活動と自ら新たな信者を誘い込む(誘われた信者を「霊の子」といい、誘った側を「霊の親」という)活動で実績をあげることが使命であるとされている。このため信者は必然的に新たな被害者を生み出す加害者となるのである。
イ その信者の家族は、反社会的活動を行って、被害をまき散らす信者を家族にかかえることになる。通常の感覚と全く異なる考え方に染め上げられて、反社会的活動であっても正しいことと信じ込んで行動する原告のため、原告が同居していれば日常的に緊張を強いられる。「献身」してしまえば全く手の届かないところで社会悪を犯す我が子や兄弟のことを憂慮しつづけなければならないのである。
実際、原告自身も統一協会による違法な霊感商法に責任者的な立湯で関与していた。
第2 話し合いが長期間に及んだことについて
1 統一協会信者について
(1)統一協会の信者となることについて
統一協会に献身した信者は、統一協会や文鮮明だけでなく、日常生活をともにしている先輩格の信者達に(これを統一協会では「アベル」と称している)の指示を絶対に正しいものと信じて、長期間その指示に従って生活している。
すなわち、何時に起きて何をし、何を目標にどう考えて何に取り組むか、その全てを組織の指示によって長年活動し続けているのである。
統一協会にいる間は、全て先輩格の信者(アベル)が信者の生活や嗜好を統括管理しており、全ての献身者が組織的な目標(「摂理」などと称している)の達成に向けて24時間活動している。同じ統一協会の「ホーム」で共同生活をおくり、同じ「目的」のために活動してきた信者相互間の連帯感も強固にさせられている。統一協会の内部では、このような信者相互の関係を「心情的なつながり」と表現している。
まして上意下達の強固な命令系統はアベル(上司)・カイン(部下)とよばれ、「絶対屈服・絶対服従」が必要だと教え込まれ厳密に管理されている。つまりアベルの命令は絶対であり、そのアベルの一番上のアベルがメシヤとされている文鮮明である。そして、「統一原理」によれば堕落人間(一般信者)は自分で考えて自分で判断することを罪と教え、常にアベル(上司)への報告・連絡・相談(報連相)を徹底させるように繰り返し指導している。
献身した信者は、統一協会内部での教え込みによって、たとえ現行法に反することをなし、あるいは社会的に強く批判されているとしても、自分は正しいことをしていると思いこまされる。今は家族も反対しているが、将来(死後の霊界でのことも含む〉には、必ず自分の統一協会での活動に深く感謝してくれるはずだ、と信じ込むようになる。だからこそ自分のためだけでなく家族のためにも、ひいては日本や世界の人々のためにも命がけで統一協会の活動を行っているのである。「この世の法律より天法(教祖文鮮明の命令)が優先する。」「大いなる善(統一協会の目的)のために小さい悪は許される」という考え方に凝り固まっている信者の価値観は、常識や善意の評価を含めて、すでに大きく変えられているので容易に通常の会話は成り立たないのが実情である。
(2)話し合いを困難にする統一協会の教育
統一協会員は、家族の話し合いに対する対策として、統一協会・文鮮明に対する信仰を妨げるような話を本気になって聞いてはならない(統一協会では、これを「相対基準を立てない」と言う。)と教育される。そしてサタンに霊的に惑わされ「落とされる」(信仰を奪われる)ことのないように、本気で家族の話を聞いてはならないと教え込まれる。統一協会では、批判的な内容は反対勢力のデマだとか事実ではないなどと教え込み、メシヤに対して不信感を抱かせるような情報はサタンの策略だから本気で受け止めることのないようにと指導するのである。情報を普通に得てそれに基づいて自分本来のまともな頭で正しく判断することをできなくさせるのである。
統一協会では人間は堕落していて罪深いので、自分で考えると間違ってしまうと教えられており、自分で考えるということ自体が自己中心的で悪いことで、より神に近いアベル(上司)の指示に従わなくてはいけないと教え込まれ、それが習慣づけられる。その上に、統一協会に批判的な情報を拒絶するように教育されているので、自分自身で統一協会の教義や活動内容を検証したり、教えを見直してみるという心理状態になるのは極めて困難である。
統一協会・文鮮明を一度受け入れておきながらもし裏切ったら、裏切り者として地獄の中でも最悪の場所(地獄の奥底)で永遠にもがき苦しむことになるとも教えているので統一教会の教義や活動内容を疑うこと自体が信者にとって恐ろしいことなのである。
2 話し合いの目的
被告■<後藤徹氏の兄>らは、自らが元信者であった経験及びその後の統一協会について勉強した情報から、統一協会の活動には、上述した宗教団体にあるまじき極めて重大な問題が内在していると考えていた。被告■<後藤徹氏の兄>らは、家族として、原告が統一協会の信者であること自体が原告本人にとって大変な問題であり、違法行為を行わざるを得なくなることを含めて望ましくないことと考えていた。
先ほど述べたとおり、統一協会においては、「統一原理」により、堕落人間(一般信者)は自分で考えて自分で判断することを罪と教え、常にアベル(上司)への報告・連絡・相談(報連相)を徹底させるように繰り返し指導しているため、統一協会信者本人が自分の判断でものごとを決め、社会人として自立するためには、たいへんな努力が必要なのであり、その苦しみを家族が長い目で愛情をもって支えることが必要不可欠となる。
したがって、被告■<後藤徹氏の兄>らの話し合いの目的は、原告を統一協会から辞めさせることにあるのではなく、原告が、自立した思考をすることができるようになり、自らの頭で、統一協会の問題、家族との関係、今後の人生について考えることができるようになってもらうことである。原告が、統一協会の問題点や家族関係についてどのように考えるか、また、原告が今後どのような道を歩むかについて決めるのは、あくまで原告自身であるし、そうでなければならない。
今回の件は、統一協会の言う、脱会ありきの信教の自由を無視した強制改宗というものでは断じてない。また脱会させるという意識が強いほど、本人は反発するので家族と信頼関係が結べず、本人が自分自身を見直し、統一協会との関わり方を自分なりに見直すということがなかなかできない。単に脱会させればいいという考え方こそ間違っており、なぜ本人が統一協会の教えに惹かれていったのか、親子関係は、夫婦関係は、兄弟関係はどうだったのか、親として家族として本人に人生の指針を与えてやれていたのか。家族の中に潜む問題にまで思いをはせ、このことをきっかけに、心のうちを気兼ねなく吐き出せるような家族関係を作り、お互いがお互いを心底信頼できる家族となることこそが本当の目的なのである。
3 話し合いの方法について
話し合いにおいて、被告■<後藤徹氏の兄>らは、原告に対し、統一協会をやめるべきだと言ったり、そのための説得をしたことはない。原告が正しい情報に基づいて悔いのない人生の選択ができるよう情報を提供し、話し合うことにつとめてきた。
上述したとおり、統一協会信者は、「この世の法律より天法(教祖文鮮明の命令)が優先する。」「大いなる善(統一協会の目的)のために小さい悪は許される」という考え方に凝り固まっているし、統一協会に反対する家族やカウンセラーをサタン側の人間であると思い込まされている。そのような信者に対し、統一協会を辞めるように強要することは、信者の反発を買い、話し合いをより一層困難にするだけである。統一協会の考え方は本当に正しいことなのかどうか、統一協会信者を理解して、彼らの信じ込まされている真の意味での家族関係のあり方や人類の救い、あるべき今後の人生などについて、家族が信者本人と一緒に悩み考える姿勢があって、はじめて会話が成り立つのである。被告■<後藤徹氏の兄>らは、元信者であるから、原告との話し合いに臨むにあたっても、頭ごなしに統一協会を批判したり、辞めるように述べることの無意味さを当然に理解していたのであるから、そのようなことをすることはあり得ない。
4 なぜ、話し合いが長期間に及んだのか
(1)被告■<後藤徹氏の兄>らは、なぜ長期間話し合いに付き合ったのか
原告は、話し合いをする中で、家族の考え(統一協会は宗教団体と言いながら反社会的なことをなぜ信者にさせるのか等々)を全面的には否定できず、考え込んだり迷うような態度を見せたりもしていたので、被告■<後藤徹氏の兄>らはあきらめることなく、集中的に話をしたり、あえて話をすることなく、様子を見たりしながら、試行錯誤を繰り返していた。時には、話し合いを打ち切り、マンションを出るように促したこともあったが、原告は、自ら出て行こうとしなかったので、家族は、期待と希望を持ち続けたのである。
被告■<後藤徹氏の兄>らは、元信者であり統一協会の考え方や行動パターンをよく知っており、価値観を捻じ曲げられ人間性を破壊され、多くの人に迷惑をかけながら生きていかざるを得ない統一協会信者として生活していくことになる原告を放置しておけないと考えるのはしごく当然のことある。
いずれも元統一協会員として、その心理状況を十分に理解しているので、原告が考え込んだりふさぎこむ様子を見て、原告が統一協会の信仰を続けることについて葛藤していると思うこともしばしばあった。
また、被告■<後藤徹氏の兄>らは、自分達が統一協会の間違い(考え方、教え、活動等)がわかった時の経験や、他の元統一協会員の人たちの経験談を聞いたりして、原告が、何時どういう些細なことがきっかけで間違いに気づくかわからないとも考えていた。
被告■<後藤徹氏の兄>らは、原告が自らの頭で考えて統一協会の誤りに自分で気付いて考えてくれる可能性に期待して、忍耐して話をしたり、あえて話をしないで様子をみたりしていたのである。被告■<後藤徹氏の兄>らは、明日、三日後、一週間後、一月後には、ふと我に返るが如く、統一協会の問題点に気がついてくれて変わるかもしれない、と強い期待を持ち続けて話し合いを続けていた。家族があきらめてしまえば、原告が統一協会の間違いに気がついて自分自身の人生を取り戻すことは出来なくなるという想いがあり、原告も、話し合いの場所から出て行こうとしないため、家族としては、期待し続け、あきらめなかった結果、話し合いが長期間に及んだのである。
(2)なぜ、原告は出ていかなかったのか
ア 氏族メシヤの考え方
統一協会における「氏族のメシヤ」の概念は、文鮮明が全人類のメシヤ=救世主であるように、統一協会信者は自分の血縁(氏族)に対するメシヤとなり、命がけで救いに導く責任がある、ということであり、救いとは単純にいえば統一原理を信じさせ、文鮮明を救世主と信じる信仰を持たせ、統一協会の信者にさせるということである。
統一原理によれば、人類はその始祖アダムとエバの堕落から、まず家庭的に、次に氏族的にさらに民族的に、国家的に、世界的に堕落が広がったと考え、人類救済の道もまず個人、家庭、それから氏族、民族、国家、世界と段階を踏んでなされるとされており、統一協会の信者は、血縁関係のある一族のメシヤの立場に立ち、氏族に統一原理を信じさせなければ世界を地上天国にすることはできない、と教えられており、強烈な使命感と責任感を負わされている。
マンションから出ていけるのに出て行かない等の、通常では考えにくい行動も、統一原理的には家族を永遠の滅びから救済するための行動であり、何ら不思議ではない。家族に悪徳商法の問題や、組織や教えの矛盾を指摘されても、(統一協会的な)愛のある態度で尊敬と信頼を勝ち取り、統一協会の信仰の正しさを認めさせなければいけないのが「氏族のメシヤ」たる統一協会員の使命である。
原告が、熟読していた乙イ2「祝福と氏族メシヤ」の4ページには、「『氏族的メシヤたれ』とは、成約時代を歩む統一協会の全食口の目的であり、それなくして私たち個人の完成もありえないし、復帰摂理の歴史の目的である地上天国実現もありえません。」と書かれており、「氏族メシヤ」が統一協会における最重要概念であることは明らかにされている。そのほかにも、同書には、「皆さんは氏族を救うために、どんなに困難でも生涯迫害されても逃げてはいけません。それを歓迎し続け、正面で受けます。正面から困難なサタンの行為を歓迎しなさい。それが先生のとった道なのです。」(乙イ2、32頁)、「だから、氏族的メシヤである皆さんが、再臨主の前に、皆さんの家庭と氏族的基盤を連結させる、その責任分担がどれほど重要かということを知らなければなりません。すなわち、皆さんの父母は堕落した今の世界で皆さんを生みましたが、皆さんの蕩減復帰によって皆さんの父母圏が天の国に入籍され、そうしてサタン圏を逃れて天の国で皆さんが生まれる、そのような基準まで上がっていくのです。」(乙イ2、43頁~44頁)などと、両親や家族を救うことが、教義的に非常に重要だということが述べられている。また、「メシヤという立場は父母の立場であり、父母は真の愛をもって子女のために自分のすべてをささげていくのです。父母の心情は堕落世界においても変わらず、荒漠たるこの世において唯一残っている真の心情です。それを感じさせる実体が父母の立場なのです。したがって、子女を愛する父母の心情で完全投入するとき、はじめて氏族の主人として立つことができるのです。」(乙イ2、50頁)などと、統一協会員が自分の親を導く際には、父母の立場で親が子供を愛するように愛さなければならず、親が破滅に向かっている子供を命がけで助ける気持ちで伝道するようにと述べられている(教義的にも子どもが親を救いに導いた場合は子どもが「霊の親」となる)。
原告は、フラワーマンションで共に生活していたとき、最後まで「神が働けば家族が原理を信じることも不可能じゃないんだよ。」と言っており、統一協会の教えについて語っていた。統一協会の信者にとっては家族を救うということが、自分の救いや地上天国の完成にも密接に関係してくることであり、永遠の命がかかっていると思えばこそ、自分のやりたいように生きる生活よりも、家族とともに生活し、尊敬に値するすばらしい人間であるという証を立てて、愛をもって家族を屈服させ、統一原理を共に信じて生きていけるようにするのが自分の使命=「氏族のメシヤ」である、と原告は考えていたものと思われる。特に後藤家にとっては統一協会信者が原告のみとなってしまい、「自分が統一協会から離れてしまったら家族や親戚が天国に行く道を断ち切ってしまう。自分は氏族にとって最後の砦だ。」と考えていたはずである。統一協会を離れたら死後地獄に落ちるという恐怖ともあいまって、その責任感と使命感はさらに強烈になっていたものと思われる。
イ 統一協会での生活との比較
統一協会での献身生活は、いつも献金の目標金額や、伝道人数の達成の指示に追い込まれ続けており、切羽詰まった生活である。信者等は、自分たちの働き如何で日本や世界が滅びるかどうかが決まると教え込まれており、強いプレッシャーがかけられており、借金をしてまで献金させられるのである。
原告にしてみれば、氏族メシヤとしての使命を果たすという大義名分のもと、家族に衣食住の生活の面倒を見て貰いつつ、テレビや新聞を見たり、統一協会の教えの勉強や歴史、経済、思想、語学などの勉強に没頭することが出来る環境は、統一協会の献身者としての生活よりも、精神的、肉体的な負担が少ない状態で信仰者としての責務を全うすることが出来る環境であり、容易に離れがたいものであったのである。
ウ 統一協会信者は、メシヤの指示に従って生き、原罪が精算され、永遠の命を得て地上天国に入ることが最重要で、そのために必要なことと教えられたことならば、霊感商法や違法な伝道も使命としてやるようになることを考えれば、原告が、自分の救いのため、また氏族のメシヤとしての責任を全うするために、自由に出ることが出来たにもかかわらず、被告■<後藤徹氏の兄>らが原告を玄関の外に出すまで、マンションに留まり、家族と共に生活し続けたことは、何ら不自然なことではないのである。原告の行動は、統一協会による教え込み、教化を前提にすれば、了解可能な行動なのである。
エ なお、原告がマンションにとどまり続けた理由について「絶望で抵抗する気力を失た<ママ>。」「偽装脱会をしていたため、監視がなくなり逃走が確実にできる状態になるまで辛抱強く機会を待つ以外なかった」「体力の衰弱」などと、膿々長々と言い訳を述べている。
しかし、原告のこれらの言い訳は、むしろ、少なくとも客観的状況としては、原告が話し合いの場所に移動する際の平穏さ、話し合いを継続することについては原告の了解の上でのことであったこと、いつでもマンションから出て行こうと思えば可能な状況であったことを、原告自身が認めているに等しい。
「絶望で抵抗する気力を失った」などという言い訳は、長期間の話し合いにもかかわらず、統一協会の信仰を持ち続けた強固な意思の持ち主である原告の態度とは相容れない。原告の上記の如き言い訳は、本当に話し合いをすること自体を拒否するよう指導している統一協会の方針にも反する独自のものを思われる。
「体力の衰弱」について、原告の主張が全くの白々しい出鱈目であることについては、 既に主張しているところではあるが、さらに、原告準備書面(4)において、原告が、「健康維持のため一日15分程度、簡単な運動をしていた」ことを認めたことからも、より一層、女性にも取り押さえられてしまう衰弱した体力といった主張が出鱈目であることが明確になった。一日15分程度の簡単な運動が毎日出来る人物が、栄養失調で危険な状態ということはいくら何でもあり得ない。
この準備書面は、統一協会の反社会性についての記載が多くをしめている。
統一教会員の読者にとっては、耳の痛い内容であろうと思う。
明らかに事実誤認と思われる内容については、注釈をつけた。
準備書面(第3)
2011 (平成23)年12月19日
東京地方裁判所民事第12部合議係 御中
被告■<後藤徹氏の兄>、■<後藤徹氏の兄嫁>、■<後藤徹氏の妹>
訴訟代理人弁護士 山 口 貴 士
同 荻 上 守 生
第1 統一協会の反社会性について
1 統一協会の概要
(1)世界基督教統一神霊協会(以下「統一協会」という)は、1920年に今の北朝鮮で出生した文鮮明が1954年5月に韓国で創立した。その教えは、「統一原理」と呼ばれ、「原理講論」と言う本に著されている。
文鮮明は日本の専門学校である早稲田大学附属高等工学校で学んだ後、今の北朝鮮に帰省し、社会秩序を乱した罪で北朝鮮で1948年に実刑判決を受けた。朝鮮戦争の動乱期に韓国に逃走した後にも、同種事件で1955年にソウルで逮捕されている。
これらの判決や逮捕は、文鮮明が多くの女性と性関係を持ったことが理由と言われている。
文鮮明は1960年に現在の妻韓鶴子(1944年生まれ)と、法律上は2度目の結婚をした。韓鶴子との間には12人の子がいる。その長男が文孝進である。彼は統一協会の最高幹部の娘である洪蘭淑(ホンナンスク)と結婚したが、洪は孝進の虐待に耐えかねて自宅を出て、離婚した。1998年秋、洪はIn the Shadow of the Moons(日本では「わが父文鮮明の正体」)という手記の書籍を書いて、同人が自ら体験した文鮮明一家の家庭崩壊の実態や統一協会の組織の事情について赤裸々に述べている。なお、長男孝進は2000年3月17日<注1>に死去している。
(2)韓国で始まった統一協会は、1958年に日本で布教を始めた。
統一協会は、1961年に成立した朴政権に反共活動の面で利用されるようになり、63年に韓国で財団として認可され、64年に日本で宗教法人として認証された。それ以来、統一協会は、国際勝共連合の実質的母体として韓国や日本の反共政治組織に利用されるようになったのである。1974年にニクソン大統領と文鮮明が会った頃からは、米国でも様々な政治工作を展開してきた。1979年に米国議会で問題になったコリアゲート事件では、統一協会幹部の朴晋煕が米国の議会で証言を求められたこともある。
アメリカでは1982年に文鮮明が提唱して設立した日刊紙Washington Timesを中心に、言論界や政界に一定の影響力をもつようになった。しかし、アメリカでは文鮮明とその側近の神山威(元日本統一協会会長)の2人が脱税で実刑判決を受け、1984年7月から1年余り下獄している。
(3)韓国では、日本から長期間にわたって送られ続けてきた資金をもとに統一重工業や一信石材、一和、世界日報などの企業が設立運営されてきた。統一協会傘下の統一維持財団は韓国に40ある財閥のひとつと言われている。韓国では、文鮮明は宗教家としてよりも経済的な成功者として知られている。
しかし、1997年からの韓国経済の破綻と、日本の統一協会組織からの送金の減少のため、韓国の統一協会系の企業のほとんどが事実上倒産しているとも言われる時期があった。
(4)日本では、1964年頃、信者になった若者たちの家出と学業放棄が続出した。親たちのいかなる説得も涙も通用せず、信者になった若者は、統一協会に反対すると実の両親さえ自分の本当の親ではないとして、サタン呼ばわりした。このため、親たちはなすすべもなく失望と落胆の世界に追い込まれた。統一協会はこの頃から、「親泣かせの原理運動」としてマスコミに何度も何度も登場し、それ以後何かと物議をかもし出してきた。
1975年頃から大理石壷や人参液を霊感商法の手口を用いて不特定多数の市民に高額価格で売って潤沢な資金を手にするようになった。1975年から約10年間余りにわたって、日本の統一協会は、文鮮明のもとに、毎月50ないし100億円の資金を送りつづけたと多くの中堅信者が述べている。今でも、日本人信者は毎年数百億円の資金を文鮮明に送りつづけており、文鮮明の日本組織への送金の指示は極めて厳しいものでありつづけた。
文鮮明は、「エバはアダムにつかえなければならない。だから、女性は男性につかえなければならない。日本はエバ国家、韓国はアダム国家である。だから、日本はエバ国家としての使命がある」などと説教し、資金的にも、人材面でも韓国の統一協会組織や文鮮明の活動を支える責任があると述べてきた。このため日本人信者はその責任を必死で果たさねばならないというのである。
このようにして集められた資金を使って、文鮮明やその側近らは、ソ連のゴルバチョフや北朝鮮の金日成、更には中国の要人などと会っている。文は朝鮮半島の南北統一に寄与したいと述べているが、本音は金目成のように文鮮明国家を創立し、その支配者になりたかったと評されている。南米のブラジルに広大な土地を買って、そこに地上の楽園を造ると称して、日本人信者に協力するよう指示していた時期も長期間続いた。
2 日本での被害
(1)1997年9月18日の最高裁判決で、統一協会の法的責任が確定した事例(原審は福岡地裁平成6年5月27日、判例時報1526.121)は全国で発生している多くの被害の中でも極めて典型的な事例である。
1987年8月に夫が死去した46歳のA女は、娘と2人で失意の生活をおくっていた。1988年2月、統一協会の信者Bは、戸別訪問をして知り合ったA女を、統協会<ママ>信者が運営している絵画展に誘い、担当信者らがしつこく勧めて22万円の絵画をA女に買わせた。BらはA女方に再三訪問して、めったに会えないえらい先生に家系図を見てもらうよう勧め、霊場に連れ出した。そこで先生(実は信者C)が、「あなたの夫が地獄で苦しんであなたの救いを求めている。すべてを投げうって天にささげる気持ちで献金しないと娘も不幸になる」などと脅して長時間説得し、結局500万円を献金させた。BらはA女をその後もビデオセンターに通わせて、統一協会の教義を教え込み、霊界の恐怖をうえつけて、A女に弥勒像の代金として700万円、印鑑3本セットの代金20万円を支払わせた。その上で別の先生役の信者A女を説得して、A女の夫の生命保険3000万円も「今こそ天にささげなければならない。夫も霊界でそれを望んでいる」などと述べて、献金させた。
このような手口による資金集めは、霊感商法と言われている。
(2)このような事件は決して偶発的なものではない。奈良地裁平成9年4月16日判決(判例時報1648.108、解説は民事法情報132号48頁)で認定しているとおり、日本の統一協会組織において、システム化された献金勧誘活動であって、長期間全国で展開されているのである。
信者のこのような献金勧誘行為が違法であり、統一協会に使用者責任があるとする判決は、前述した福岡地裁、福岡高裁(平成8年2月19日判決)、最高裁判決の外、東京地裁平成9年10月24日判決(判例時報1638.107)、東京高裁判決平成10年9月22日、最高裁判決平成11年3月11日、高松地裁平成8年12月3日判決があり、すでにこのような判例の考え方は確定したといえる。
更に前述した奈良地裁判決では、システム化された献金勧誘のシステム・手口自体が違法であるとして、統一協会としての民法709条の不法行為責任を認めるという、より実態に則した判断をしている。
また、平成11年3月23日言渡の仙台地裁判決では、献金勧誘行為の外、信者が運営している会社(解散している)の人参液販売についてまで、統一協会の使用責任者<ママ>を認めている。
問題は、統一協会がこのような相次ぐ判決を無視して、文鮮明の献金指令に応じるため、長期間にわたって全国で同様の手口による印鑑・人参液、風水などを利用して、四神(天の四方の神)すなわち東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武(亀と蛇)と呼ばれる水晶の置物等の販売や、違法な献金勧誘行為をつづけてきたことである。
前述した福岡地裁判決の事例のように、統一協会による金銭被害は1回で終わらない。まだ財産があり、家族の悩みや将来の不安があってつけ入ることができると判ると、しつこくつきまとって、喫茶店やサロンのような形状に造られているビデオセンター(全国各地の市街地に数百ある)に通わせて、統一協会の教義であることを隠して、その教義を教え込んでいく。こうして「真理」を学ぶことで初めて先祖の因縁から解放されると言われ、スタッフの信者にほめ上げられ、親切を押しつけられると、人の良い市民は容易に断れなくなってしまうのである。
(3)しかし、こんなA女の加害者側になったBのような立場の信者たちも、ある意味では統一協会による被害者である。
その典型例は次のとおりであり、このような形でほとんどの信者が違法行為に手を染めている。
甲は25歳の看護師で、毎日が忙しく、心に満たされないものを感じていた。アパートに帰ってもテレビを相手に1人寂しい夕食の毎日。駅頭で青年の意識アンケートに答えたのがきっかけでビデオセンターに通い始めた。聖書の話が出てきたが、スタッフは「宗教とは関係ない」「人生について勉強するところ」とごまかした。スタッフらに励まされて通ってスタッフと親しくなったころを見計らって、そこが悪名高い統一協会の勧誘施設と知らされた。しかし、その時には、「でもまじめで親切だし、うそを説明しているのでもないから、もうすこし通ってみよう」と考えるようになっていた。日本の若者は宗教についての教育をほとんど受けていないし、ふだん触れる機会もないので、その教義の矛盾や聖書のごまかしに気付くことができないのである。
甲は、統一協会が勧誘目的で運営するビデオセンターに通うよう執拗に説得されて、毎日帰宅が遅くなり、その後修練会への参加のため職場を休むことも増え、「献身」を勧められた。こうして甲は退職し、信者が共に住むホームに転入して共同生活を始めた。献身前には統一協会組織で売っている宝石、着物、絵画、人参液などを購入するためにクレジットやサラリーローンから借金をさせられている。退職金も全て統一協会に献金してしまった。アパートの家財道具も統一協会のホームに寄付した。甲の両親が心配して連れ戻すのを防ぐためとして、甲は幹部が指示するままにホームを移り住みつつ、連日物品販売や伝道(ビデオセンターへの誘い込み)に睡眠時間を惜しんで奔走する毎日を送りつづけた。そのような活動をすることが本人やその家族や日本人が地獄に堕ちて苦しまず、メシヤによって救われる唯一の方法だと信じ込まされているのである。甲は毎月15,000円の小遣いをもらうだけで、休日は月に1日だけ。甲は、合同結婚式に参加して、真(まこと)のお父様(メシヤ文鮮明)が選んでくれた男性と理想の家庭をつくることだけを夢見るようになっていった。
(4)信者勧誘や献身者の生活管理の問題
ア 日本の統一協会には、この甲のように、睡眠時間以外の全ての時間を統一協会の指示通り伝道や資金集めの活動に費やしている者(献身者と称している)が数千人いる。
また、Aのように、家庭人だったり、他に仕事をもちながら組織の指示で活動する信者が数千人いる。
最近では甲のような献身者が減り、仕事をもって毎月多額の献金をさせられている信者が増えているようである。
また、合同結婚式で韓国人男性とカップリングされたことから、韓国の統一協会を支える任務をもたされて、韓国内で活動したり、家庭をもって慣れない生活を営んでいる日本人女性が約6000人余いる。そのような日本人信者女性と、韓国人男性との間の子が韓国に1万人以上いるのが実情であり、その将来も心配されている。
イ 勧誘活動の最大の問題は、統一協会であることはもとより、宗教であることさえ隠してビデオセンターに通わせ、先祖の因縁や将来の不幸、霊界で永遠に地獄で苦しむなどの不安をあおってやめられなくしていく手口にある。統一協会に反対する家族をサタンと決めつけたり、サタンにあやつられていると非難して家庭を崩壊させ、24時間文鮮明のために働くロボットにしていくシステム化された「教育」の実態こそ最大の問題である。
ウ 前述した甲のように、違法な資金集めをしても、地上天国実現のために正しいことをしていると思い込むようになっているのである。ストイックなホームでの共同生活では、情報も感情も思考もコントロールされているので、文鮮明やアベルを疑うこと自体が罪だと考えるようになっている。統一協会をやめると永遠に地獄で苦しむことになるし、先祖や子孫を不幸におとし入れるだけでなく、日本自体が沈没したり、滅び去ると思い込まされているので統一協会をやめられないのが実情である。
エ こんな信者たちの行為により、毎年多数の霊感商法の被害者が出ている。1987年に霊感商法の被害者を救済し、被害を防止するために全国の約300名の弁護士で組織された全国霊感商法対策弁護士連絡会の集計では、1987年から2010年までの約24年間で、合計32,283人、被害合計額1116億8188万7329円の被害相談があったが、この金額でもまだ全体の被害の氷山の一角でしかない。
統一協会には、「万物復帰」という、世の中の全ての財産は本来メシヤである文鮮明に使ってもらうためにあるという教義かある。しかも文鮮明がエバ国家である日本の統一協会に対して高額の献金を指示しつづけている。このため、どんなに社会的に批判されても霊感商法の手口による資金集めを止められないのである。
現在でも信者らは文鮮明の法外な額の献金指令を達成するため、短期間のうちに多額の献金を指示されたり、様々な名目での献金を指示されている。このため、親族や友人、知人に嘘の口実で借金して、これを返そうとしない信者も多い。
(5)警察による相次ぐ摘発
このような統一協会による違法な資金集め活動については、被告宮村答弁書における主張を援用するが、同答弁書において紹介されたように、警察による摘発がなされ、起訴された事件については全件有罪となり、控訴されることなく確定している。
(6)合同結婚式や海外宣教の問題
ア 統一協会は、92年8月、95年8月、97年11月、98年6月、99年2月など頻繁に合同結婚式をしてきた。日本人の参加者は参加する度に1人140万円の献金と30万円の経費を出すように指示されてきた。99年2月には一般では誰も信じていないが3600万組の男女が参加したと宣伝した。それ以降も繰り返し現実ばなれした参加カップル数を標榜している。いずれにしても、参加者の献金(日本人は1人140万円プラス経費分)は貴重な収入源になっており、合同結婚式の派手なイベントは勢力誇示の機会となっている。
イ 信者たちは、原罪をかかえた自分が唯一救われる方法がメシヤである文鮮明の祝福を受けて、メシヤが選んだ異性と家庭を持って子をつくることと信じ込まされている。その参加を認められるよう組織の言いなりに伝道や資金集めに努力し、参加後も統一協会の指示通り活動しつづけるのである。そして合同結婚式に参加しても、統一協会が認めるまで入籍させないし、手も握らないよう指示する。勿論家庭を持つことも認めない。
ウ しかし、このような若い信者たちが仮に婚姻をしても、本当に自分の意思で相手を選んだ有効な婚姻とは認めがたいのが実情である。
最高裁判所は1996年4月25日、合同結婚式に参加して入籍した後脱会した日本人女性と日本人男性信者の入籍は有効な婚姻だと認められないと判決した。
この一審は福岡地裁平成5年10月7日判決(判例時報1483.102)である。この外、入籍した後脱会した元信者による婚姻無効の確認を求める裁判や家事審判では、これまで約50件ほどがその主張通り認められている。
しかも、仮にその2人が実際に家庭を持つよう指示されたとしても、様々な事情で夫婦関係や家庭生活がうまくいかないことが多い。現に、福島県では韓国人男性が日本人の妻の母親を、愛知県ではフィリピン人男性が日本人の妻を殺害してしまった事件まで起こっている。
エ しかも、家庭を持った後であっても、統一協会の組織活動にかり出されて、平穏な家庭生活を営めない夫婦が多いのが実情である。日本人女性信者約3000人が世界各国に伝道要員として派遣されて、統一協会のダミー組織である世界平和女性連合のボランティアだと名乗って、正体を偽って市民に近づき、伝道活動をして、合同結婚式への参加を募ってきた。その女性が家庭をもっている場合には、幼い子が老祖父母や夫の手に委ねられていることもあった。
(7)加害者になることの問題
ア このように、信者になった者は、自らの財産を喪失し、自らの人生を主体的に選択することを放棄させられ、統一協会の指示通りに活動し、生活するようになるという面で被害者でもある。しかし、信者である以上、資金集めの活動と自ら新たな信者を誘い込む(誘われた信者を「霊の子」といい、誘った側を「霊の親」という)活動で実績をあげることが使命であるとされている。このため信者は必然的に新たな被害者を生み出す加害者となるのである。
イ その信者の家族は、反社会的活動を行って、被害をまき散らす信者を家族にかかえることになる。通常の感覚と全く異なる考え方に染め上げられて、反社会的活動であっても正しいことと信じ込んで行動する原告のため、原告が同居していれば日常的に緊張を強いられる。「献身」してしまえば全く手の届かないところで社会悪を犯す我が子や兄弟のことを憂慮しつづけなければならないのである。
実際、原告自身も統一協会による違法な霊感商法に責任者的な立湯で関与していた。
第2 話し合いが長期間に及んだことについて
1 統一協会信者について
(1)統一協会の信者となることについて
統一協会に献身した信者は、統一協会や文鮮明だけでなく、日常生活をともにしている先輩格の信者達に(これを統一協会では「アベル」と称している)の指示を絶対に正しいものと信じて、長期間その指示に従って生活している。
すなわち、何時に起きて何をし、何を目標にどう考えて何に取り組むか、その全てを組織の指示によって長年活動し続けているのである。
統一協会にいる間は、全て先輩格の信者(アベル)が信者の生活や嗜好を統括管理しており、全ての献身者が組織的な目標(「摂理」などと称している)の達成に向けて24時間活動している。同じ統一協会の「ホーム」で共同生活をおくり、同じ「目的」のために活動してきた信者相互間の連帯感も強固にさせられている。統一協会の内部では、このような信者相互の関係を「心情的なつながり」と表現している。
まして上意下達の強固な命令系統はアベル(上司)・カイン(部下)とよばれ、「絶対屈服・絶対服従」が必要だと教え込まれ厳密に管理されている。つまりアベルの命令は絶対であり、そのアベルの一番上のアベルがメシヤとされている文鮮明である。そして、「統一原理」によれば堕落人間(一般信者)は自分で考えて自分で判断することを罪と教え、常にアベル(上司)への報告・連絡・相談(報連相)を徹底させるように繰り返し指導している。
献身した信者は、統一協会内部での教え込みによって、たとえ現行法に反することをなし、あるいは社会的に強く批判されているとしても、自分は正しいことをしていると思いこまされる。今は家族も反対しているが、将来(死後の霊界でのことも含む〉には、必ず自分の統一協会での活動に深く感謝してくれるはずだ、と信じ込むようになる。だからこそ自分のためだけでなく家族のためにも、ひいては日本や世界の人々のためにも命がけで統一協会の活動を行っているのである。「この世の法律より天法(教祖文鮮明の命令)が優先する。」「大いなる善(統一協会の目的)のために小さい悪は許される」という考え方に凝り固まっている信者の価値観は、常識や善意の評価を含めて、すでに大きく変えられているので容易に通常の会話は成り立たないのが実情である。
(2)話し合いを困難にする統一協会の教育
統一協会員は、家族の話し合いに対する対策として、統一協会・文鮮明に対する信仰を妨げるような話を本気になって聞いてはならない(統一協会では、これを「相対基準を立てない」と言う。)と教育される。そしてサタンに霊的に惑わされ「落とされる」(信仰を奪われる)ことのないように、本気で家族の話を聞いてはならないと教え込まれる。統一協会では、批判的な内容は反対勢力のデマだとか事実ではないなどと教え込み、メシヤに対して不信感を抱かせるような情報はサタンの策略だから本気で受け止めることのないようにと指導するのである。情報を普通に得てそれに基づいて自分本来のまともな頭で正しく判断することをできなくさせるのである。
統一協会では人間は堕落していて罪深いので、自分で考えると間違ってしまうと教えられており、自分で考えるということ自体が自己中心的で悪いことで、より神に近いアベル(上司)の指示に従わなくてはいけないと教え込まれ、それが習慣づけられる。その上に、統一協会に批判的な情報を拒絶するように教育されているので、自分自身で統一協会の教義や活動内容を検証したり、教えを見直してみるという心理状態になるのは極めて困難である。
統一協会・文鮮明を一度受け入れておきながらもし裏切ったら、裏切り者として地獄の中でも最悪の場所(地獄の奥底)で永遠にもがき苦しむことになるとも教えているので統一教会の教義や活動内容を疑うこと自体が信者にとって恐ろしいことなのである。
2 話し合いの目的
被告■<後藤徹氏の兄>らは、自らが元信者であった経験及びその後の統一協会について勉強した情報から、統一協会の活動には、上述した宗教団体にあるまじき極めて重大な問題が内在していると考えていた。被告■<後藤徹氏の兄>らは、家族として、原告が統一協会の信者であること自体が原告本人にとって大変な問題であり、違法行為を行わざるを得なくなることを含めて望ましくないことと考えていた。
先ほど述べたとおり、統一協会においては、「統一原理」により、堕落人間(一般信者)は自分で考えて自分で判断することを罪と教え、常にアベル(上司)への報告・連絡・相談(報連相)を徹底させるように繰り返し指導しているため、統一協会信者本人が自分の判断でものごとを決め、社会人として自立するためには、たいへんな努力が必要なのであり、その苦しみを家族が長い目で愛情をもって支えることが必要不可欠となる。
したがって、被告■<後藤徹氏の兄>らの話し合いの目的は、原告を統一協会から辞めさせることにあるのではなく、原告が、自立した思考をすることができるようになり、自らの頭で、統一協会の問題、家族との関係、今後の人生について考えることができるようになってもらうことである。原告が、統一協会の問題点や家族関係についてどのように考えるか、また、原告が今後どのような道を歩むかについて決めるのは、あくまで原告自身であるし、そうでなければならない。
今回の件は、統一協会の言う、脱会ありきの信教の自由を無視した強制改宗というものでは断じてない。また脱会させるという意識が強いほど、本人は反発するので家族と信頼関係が結べず、本人が自分自身を見直し、統一協会との関わり方を自分なりに見直すということがなかなかできない。単に脱会させればいいという考え方こそ間違っており、なぜ本人が統一協会の教えに惹かれていったのか、親子関係は、夫婦関係は、兄弟関係はどうだったのか、親として家族として本人に人生の指針を与えてやれていたのか。家族の中に潜む問題にまで思いをはせ、このことをきっかけに、心のうちを気兼ねなく吐き出せるような家族関係を作り、お互いがお互いを心底信頼できる家族となることこそが本当の目的なのである。
3 話し合いの方法について
話し合いにおいて、被告■<後藤徹氏の兄>らは、原告に対し、統一協会をやめるべきだと言ったり、そのための説得をしたことはない。原告が正しい情報に基づいて悔いのない人生の選択ができるよう情報を提供し、話し合うことにつとめてきた。
上述したとおり、統一協会信者は、「この世の法律より天法(教祖文鮮明の命令)が優先する。」「大いなる善(統一協会の目的)のために小さい悪は許される」という考え方に凝り固まっているし、統一協会に反対する家族やカウンセラーをサタン側の人間であると思い込まされている。そのような信者に対し、統一協会を辞めるように強要することは、信者の反発を買い、話し合いをより一層困難にするだけである。統一協会の考え方は本当に正しいことなのかどうか、統一協会信者を理解して、彼らの信じ込まされている真の意味での家族関係のあり方や人類の救い、あるべき今後の人生などについて、家族が信者本人と一緒に悩み考える姿勢があって、はじめて会話が成り立つのである。被告■<後藤徹氏の兄>らは、元信者であるから、原告との話し合いに臨むにあたっても、頭ごなしに統一協会を批判したり、辞めるように述べることの無意味さを当然に理解していたのであるから、そのようなことをすることはあり得ない。
4 なぜ、話し合いが長期間に及んだのか
(1)被告■<後藤徹氏の兄>らは、なぜ長期間話し合いに付き合ったのか
原告は、話し合いをする中で、家族の考え(統一協会は宗教団体と言いながら反社会的なことをなぜ信者にさせるのか等々)を全面的には否定できず、考え込んだり迷うような態度を見せたりもしていたので、被告■<後藤徹氏の兄>らはあきらめることなく、集中的に話をしたり、あえて話をすることなく、様子を見たりしながら、試行錯誤を繰り返していた。時には、話し合いを打ち切り、マンションを出るように促したこともあったが、原告は、自ら出て行こうとしなかったので、家族は、期待と希望を持ち続けたのである。
被告■<後藤徹氏の兄>らは、元信者であり統一協会の考え方や行動パターンをよく知っており、価値観を捻じ曲げられ人間性を破壊され、多くの人に迷惑をかけながら生きていかざるを得ない統一協会信者として生活していくことになる原告を放置しておけないと考えるのはしごく当然のことある。
いずれも元統一協会員として、その心理状況を十分に理解しているので、原告が考え込んだりふさぎこむ様子を見て、原告が統一協会の信仰を続けることについて葛藤していると思うこともしばしばあった。
また、被告■<後藤徹氏の兄>らは、自分達が統一協会の間違い(考え方、教え、活動等)がわかった時の経験や、他の元統一協会員の人たちの経験談を聞いたりして、原告が、何時どういう些細なことがきっかけで間違いに気づくかわからないとも考えていた。
被告■<後藤徹氏の兄>らは、原告が自らの頭で考えて統一協会の誤りに自分で気付いて考えてくれる可能性に期待して、忍耐して話をしたり、あえて話をしないで様子をみたりしていたのである。被告■<後藤徹氏の兄>らは、明日、三日後、一週間後、一月後には、ふと我に返るが如く、統一協会の問題点に気がついてくれて変わるかもしれない、と強い期待を持ち続けて話し合いを続けていた。家族があきらめてしまえば、原告が統一協会の間違いに気がついて自分自身の人生を取り戻すことは出来なくなるという想いがあり、原告も、話し合いの場所から出て行こうとしないため、家族としては、期待し続け、あきらめなかった結果、話し合いが長期間に及んだのである。
(2)なぜ、原告は出ていかなかったのか
ア 氏族メシヤの考え方
統一協会における「氏族のメシヤ」の概念は、文鮮明が全人類のメシヤ=救世主であるように、統一協会信者は自分の血縁(氏族)に対するメシヤとなり、命がけで救いに導く責任がある、ということであり、救いとは単純にいえば統一原理を信じさせ、文鮮明を救世主と信じる信仰を持たせ、統一協会の信者にさせるということである。
統一原理によれば、人類はその始祖アダムとエバの堕落から、まず家庭的に、次に氏族的にさらに民族的に、国家的に、世界的に堕落が広がったと考え、人類救済の道もまず個人、家庭、それから氏族、民族、国家、世界と段階を踏んでなされるとされており、統一協会の信者は、血縁関係のある一族のメシヤの立場に立ち、氏族に統一原理を信じさせなければ世界を地上天国にすることはできない、と教えられており、強烈な使命感と責任感を負わされている。
マンションから出ていけるのに出て行かない等の、通常では考えにくい行動も、統一原理的には家族を永遠の滅びから救済するための行動であり、何ら不思議ではない。家族に悪徳商法の問題や、組織や教えの矛盾を指摘されても、(統一協会的な)愛のある態度で尊敬と信頼を勝ち取り、統一協会の信仰の正しさを認めさせなければいけないのが「氏族のメシヤ」たる統一協会員の使命である。
原告が、熟読していた乙イ2「祝福と氏族メシヤ」の4ページには、「『氏族的メシヤたれ』とは、成約時代を歩む統一協会の全食口の目的であり、それなくして私たち個人の完成もありえないし、復帰摂理の歴史の目的である地上天国実現もありえません。」と書かれており、「氏族メシヤ」が統一協会における最重要概念であることは明らかにされている。そのほかにも、同書には、「皆さんは氏族を救うために、どんなに困難でも生涯迫害されても逃げてはいけません。それを歓迎し続け、正面で受けます。正面から困難なサタンの行為を歓迎しなさい。それが先生のとった道なのです。」(乙イ2、32頁)、「だから、氏族的メシヤである皆さんが、再臨主の前に、皆さんの家庭と氏族的基盤を連結させる、その責任分担がどれほど重要かということを知らなければなりません。すなわち、皆さんの父母は堕落した今の世界で皆さんを生みましたが、皆さんの蕩減復帰によって皆さんの父母圏が天の国に入籍され、そうしてサタン圏を逃れて天の国で皆さんが生まれる、そのような基準まで上がっていくのです。」(乙イ2、43頁~44頁)などと、両親や家族を救うことが、教義的に非常に重要だということが述べられている。また、「メシヤという立場は父母の立場であり、父母は真の愛をもって子女のために自分のすべてをささげていくのです。父母の心情は堕落世界においても変わらず、荒漠たるこの世において唯一残っている真の心情です。それを感じさせる実体が父母の立場なのです。したがって、子女を愛する父母の心情で完全投入するとき、はじめて氏族の主人として立つことができるのです。」(乙イ2、50頁)などと、統一協会員が自分の親を導く際には、父母の立場で親が子供を愛するように愛さなければならず、親が破滅に向かっている子供を命がけで助ける気持ちで伝道するようにと述べられている(教義的にも子どもが親を救いに導いた場合は子どもが「霊の親」となる)。
原告は、フラワーマンションで共に生活していたとき、最後まで「神が働けば家族が原理を信じることも不可能じゃないんだよ。」と言っており、統一協会の教えについて語っていた。統一協会の信者にとっては家族を救うということが、自分の救いや地上天国の完成にも密接に関係してくることであり、永遠の命がかかっていると思えばこそ、自分のやりたいように生きる生活よりも、家族とともに生活し、尊敬に値するすばらしい人間であるという証を立てて、愛をもって家族を屈服させ、統一原理を共に信じて生きていけるようにするのが自分の使命=「氏族のメシヤ」である、と原告は考えていたものと思われる。特に後藤家にとっては統一協会信者が原告のみとなってしまい、「自分が統一協会から離れてしまったら家族や親戚が天国に行く道を断ち切ってしまう。自分は氏族にとって最後の砦だ。」と考えていたはずである。統一協会を離れたら死後地獄に落ちるという恐怖ともあいまって、その責任感と使命感はさらに強烈になっていたものと思われる。
イ 統一協会での生活との比較
統一協会での献身生活は、いつも献金の目標金額や、伝道人数の達成の指示に追い込まれ続けており、切羽詰まった生活である。信者等は、自分たちの働き如何で日本や世界が滅びるかどうかが決まると教え込まれており、強いプレッシャーがかけられており、借金をしてまで献金させられるのである。
原告にしてみれば、氏族メシヤとしての使命を果たすという大義名分のもと、家族に衣食住の生活の面倒を見て貰いつつ、テレビや新聞を見たり、統一協会の教えの勉強や歴史、経済、思想、語学などの勉強に没頭することが出来る環境は、統一協会の献身者としての生活よりも、精神的、肉体的な負担が少ない状態で信仰者としての責務を全うすることが出来る環境であり、容易に離れがたいものであったのである。
ウ 統一協会信者は、メシヤの指示に従って生き、原罪が精算され、永遠の命を得て地上天国に入ることが最重要で、そのために必要なことと教えられたことならば、霊感商法や違法な伝道も使命としてやるようになることを考えれば、原告が、自分の救いのため、また氏族のメシヤとしての責任を全うするために、自由に出ることが出来たにもかかわらず、被告■<後藤徹氏の兄>らが原告を玄関の外に出すまで、マンションに留まり、家族と共に生活し続けたことは、何ら不自然なことではないのである。原告の行動は、統一協会による教え込み、教化を前提にすれば、了解可能な行動なのである。
エ なお、原告がマンションにとどまり続けた理由について「絶望で抵抗する気力を失た<ママ>。」「偽装脱会をしていたため、監視がなくなり逃走が確実にできる状態になるまで辛抱強く機会を待つ以外なかった」「体力の衰弱」などと、膿々長々と言い訳を述べている。
しかし、原告のこれらの言い訳は、むしろ、少なくとも客観的状況としては、原告が話し合いの場所に移動する際の平穏さ、話し合いを継続することについては原告の了解の上でのことであったこと、いつでもマンションから出て行こうと思えば可能な状況であったことを、原告自身が認めているに等しい。
「絶望で抵抗する気力を失った」などという言い訳は、長期間の話し合いにもかかわらず、統一協会の信仰を持ち続けた強固な意思の持ち主である原告の態度とは相容れない。原告の上記の如き言い訳は、本当に話し合いをすること自体を拒否するよう指導している統一協会の方針にも反する独自のものを思われる。
「体力の衰弱」について、原告の主張が全くの白々しい出鱈目であることについては、 既に主張しているところではあるが、さらに、原告準備書面(4)において、原告が、「健康維持のため一日15分程度、簡単な運動をしていた」ことを認めたことからも、より一層、女性にも取り押さえられてしまう衰弱した体力といった主張が出鱈目であることが明確になった。一日15分程度の簡単な運動が毎日出来る人物が、栄養失調で危険な状態ということはいくら何でもあり得ない。
以上
2012-03-16(Fri)
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ゴミ出しにも行かず
統一協会=反社会的団体、という説明はよ~く分かった。
マンションの中で徹さんに話したような話を書いているようですね。
拉致監禁をしていないことの弁明というより、まるで、裁判長に「反統一」信仰を植え付けようとしているみたいですね。
ところで、そういう反社会的活動を後藤さんはやってたの?
後藤さんを12年間、社会に出させなかったことのほうが、よほど反社会的ではないのかな~?
<統一協会では人間は堕落していて罪深いので、自分で考えると間違ってしまうと教えられており、自分で考えるということ自体が自己中心的で悪いことで、より神に近いアベル(上司)の指示に従わなくてはいけないと教え込まれ、それが習慣づけられる>
<サタンに霊的に惑わされ「落とされる」(信仰を奪われる)ことのないように、本気で家族の話を聞いてはならないと教え込まれる>
そのように教え込まれていたのに、なぜ徹さんは話し合いに応じたの?
<被告■<後藤徹氏の兄>らは、原告が自らの頭で考えて統一協会の誤りに自分で気付いて考えてくれる可能性に期待して、忍耐して話をしたり、あえて話をしないで様子をみたりしていたのである>
あれ?、徹さんが居座った、っていう話じゃなかったっけ?
<統一協会の信者にとっては家族を救うということが、自分の救いや地上天国の完成にも密接に関係してくることであり、永遠の命がかかっていると思えばこそ、自分のやりたいように生きる生活よりも、家族とともに生活し、尊敬に値するすばらしい人間であるという証を立てて、愛をもって家族を屈服させ、統一原理を共に信じて生きていけるようにするのが自分の使命=「氏族のメシヤ」である、と原告は考えていたものと思われる>
統一協会・アベルとの連絡を一切絶ち、礼拝にも行かず、家族を救うためにマンションから出て行かないと、自分で決めたの?。自分の頭で考えたの?
<統一協会信者は、メシヤの指示に従って生き、原罪が精算され、永遠の命を得て地上天国に入ることが最重要で、そのために必要なことと教えられたことならば、霊感商法や違法な伝道も使命としてやるようになることを考えれば、原告が、自分の救いのため、また氏族のメシヤとしての責任を全うするために、自由に出ることが出来たにもかかわらず、被告■<後藤徹氏の兄>らが原告を玄関の外に出すまで、マンションに留まり、家族と共に生活し続けたことは、何ら不自然なことではないのである>
不自然すぎるだろっ。
12年間、マンションから一歩も外に出ていないんだぞ!
ゴミ出しにも行かず、皿洗いもせず、掃除もせず、家族の誕生日のプレゼントも用意せず、家族に食事を作らせ、鉛筆からノートから協会の本まで買い物に行かせ、何から何まで世話になりっぱなしで、どうして家族を救えるんだ!?!?
被告■<後藤徹氏の兄>、■<後藤徹氏の兄嫁>、■<後藤徹氏の妹>、そして、訴訟代理人弁護士・山口貴士さん、同・荻上守生さんたちのほうこそ、どうぞ「自らの頭で考えて」みてください。
話のつじつまが合っていないでしょ。おかしすぎるでしょ。
神に近いアベル(上司)、いや脱会のプロ、宮村、山口広らの「指示に従わなくてはいけない」と思いこまされているのではないですか?
マンションの中で徹さんに話したような話を書いているようですね。
拉致監禁をしていないことの弁明というより、まるで、裁判長に「反統一」信仰を植え付けようとしているみたいですね。
ところで、そういう反社会的活動を後藤さんはやってたの?
後藤さんを12年間、社会に出させなかったことのほうが、よほど反社会的ではないのかな~?
<統一協会では人間は堕落していて罪深いので、自分で考えると間違ってしまうと教えられており、自分で考えるということ自体が自己中心的で悪いことで、より神に近いアベル(上司)の指示に従わなくてはいけないと教え込まれ、それが習慣づけられる>
<サタンに霊的に惑わされ「落とされる」(信仰を奪われる)ことのないように、本気で家族の話を聞いてはならないと教え込まれる>
そのように教え込まれていたのに、なぜ徹さんは話し合いに応じたの?
<被告■<後藤徹氏の兄>らは、原告が自らの頭で考えて統一協会の誤りに自分で気付いて考えてくれる可能性に期待して、忍耐して話をしたり、あえて話をしないで様子をみたりしていたのである>
あれ?、徹さんが居座った、っていう話じゃなかったっけ?
<統一協会の信者にとっては家族を救うということが、自分の救いや地上天国の完成にも密接に関係してくることであり、永遠の命がかかっていると思えばこそ、自分のやりたいように生きる生活よりも、家族とともに生活し、尊敬に値するすばらしい人間であるという証を立てて、愛をもって家族を屈服させ、統一原理を共に信じて生きていけるようにするのが自分の使命=「氏族のメシヤ」である、と原告は考えていたものと思われる>
統一協会・アベルとの連絡を一切絶ち、礼拝にも行かず、家族を救うためにマンションから出て行かないと、自分で決めたの?。自分の頭で考えたの?
<統一協会信者は、メシヤの指示に従って生き、原罪が精算され、永遠の命を得て地上天国に入ることが最重要で、そのために必要なことと教えられたことならば、霊感商法や違法な伝道も使命としてやるようになることを考えれば、原告が、自分の救いのため、また氏族のメシヤとしての責任を全うするために、自由に出ることが出来たにもかかわらず、被告■<後藤徹氏の兄>らが原告を玄関の外に出すまで、マンションに留まり、家族と共に生活し続けたことは、何ら不自然なことではないのである>
不自然すぎるだろっ。
12年間、マンションから一歩も外に出ていないんだぞ!
ゴミ出しにも行かず、皿洗いもせず、掃除もせず、家族の誕生日のプレゼントも用意せず、家族に食事を作らせ、鉛筆からノートから協会の本まで買い物に行かせ、何から何まで世話になりっぱなしで、どうして家族を救えるんだ!?!?
被告■<後藤徹氏の兄>、■<後藤徹氏の兄嫁>、■<後藤徹氏の妹>、そして、訴訟代理人弁護士・山口貴士さん、同・荻上守生さんたちのほうこそ、どうぞ「自らの頭で考えて」みてください。
話のつじつまが合っていないでしょ。おかしすぎるでしょ。
神に近いアベル(上司)、いや脱会のプロ、宮村、山口広らの「指示に従わなくてはいけない」と思いこまされているのではないですか?
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