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後藤徹氏の控訴理由書‐偽装脱会は次善策

これから3回にわたり、控訴人から出された控訴理由書を掲載します。
第一審の時には、原告といっていましたが、控訴すると控訴人という名称に変わります。
ちなみに被告のことは被控訴人になります。

原判決(現在審議中の裁判のひとつ前の段階の裁判で下された判決のこと)での事実誤認や不当性について述べられています。

第1 拉致監禁(荻窪フラワーホーム迄)に関する事実誤認
第2 被控訴人松永および被控訴人宮村の責任に関する事実誤認
第3 被控訴人日本同盟基督教団の使用者責任否定の不当性
第4 食事制裁に関する事実誤認
第5 損害額認定に関する不当性

青字が今回掲載分


控 訴 理 由 書

           
平成26年6月5日

東京高等裁判所第民事14部 御中

 
控訴人訴訟代理人 弁護士 福本修也


 控訴人の控訴理由は下記の通りである。
 


第1 拉致監禁(荻窪フラワーホーム迄)に関する事実誤認

1 原判決の認定

 原判決は,

「原告及び被告■<後藤徹氏の妹>は,当時,統一教会の講座等において,家族らから自宅以外の場所において話合いをすることを求められた場合には,話を聞くふりをし,間違いに気付いたという姿勢をみせて偽装脱会を行い,その後戻るように指示されていた」(判決書36頁5行~8行)
と認定した上,原告がワゴン車で新潟に連行される場面及びその後のマンション滞在(荻窪プレイスまで)につき,

「原告は,話合いであれば,亡■<後藤徹氏の父>宅において行うべきであるなどと述べ,当初は亡■<後藤徹氏の父>の求めに応じなかったが,その後,1時間程度話をした後に,渋々ではあったものの,自ら立ち上がり,靴を履き,亡■<後藤徹氏の父>らや亡■<後藤徹氏の父>宅において待機をしていたOに付き添われて,玄関から亡■<後藤徹氏の父>宅の外に停められていたワゴン車の方へと向かい,これに乗り込んだ。・・・(中略)・・・原告においては,亡■<後藤徹氏の父>らと真摯に話合いを行う意思はなく,前記の統一教会における教えに従い,亡■<後藤徹氏の父>らから求められるままに形式的には話合いに応じ,偽装脱会を行い,時期をみて,統一教会のホームに戻ることを企図していた。」(同45頁9行~20行)

「原告においては,渋々ではあったものの,亡■<後藤徹氏の父>らの求めに応じ,自らワゴン車に乗り込んでおり,当該状況の態様をもって,直ちに原告が主張するような原告に対する拉致行為があったものとは認めることはできない。(イ)また,亡■<後藤徹氏の父>宅からパレスマンション多門への移動及びパレスマンション多門から荻窪プレイスにおける滞在並びに荻窪プレイスから荻窪フラワーホームへの移動に関しては,原告自身,既に前記1(1)サのとおり家族から脱会説得を受けた場合の対処方を心得ており,偽装脱会を行って時期を見て統一教会のホームに戻ることを企図しながら,話合いに応ずる姿勢を示していたことが窺われ,また,本件証拠上,その間を通じて,被告■<後藤徹氏の兄>らに対して各滞在場所から自身を退出させるよう求めたり,機会をねらって各滞在場所からの退出を試みたり,各移動に際して抵抗を試みたりしたことが窺われないことからしても,原告が自身の置かれた状況を一応容認していたことが窺われる(このことは,前記1(1)ナ(イ)の原告の供述内容からして,原告がパレスマンション多門及び荻窪プレイスに滞在している間,各監禁場所の出入り口の施錠の状況に強い関心を寄せていなかったことが窺われること,同ソ(ア)の事実からして,原告がパレスマンション多門から亡■<後藤徹氏の父>宅への移動の機会を捉えて逃走等を行おうとする意図を全く有していなかったことが窺われること等からしても,明らかである。)ところであって,その間の被告らの行為については,直ちに違法性を認めることは困難というべきである。」(同56頁12行~57頁8行)

として,拉致及び監禁の事実及び違法性を否定した。

2 原判決の事実誤認

(1) 統一教会内における拉致監禁対策講義

  統一教会内での信者に対する拉致監禁対策講義・指導に文字色おいては,話し合いのために自宅以外のマンション等に行こうと家族から誘われた場合に,話を聞くふりをしてそこに行くよう指導などしてない。統一教会ないし信徒会では,家族が用意するマンション等に行けば,その場に監禁されて脱出することができなくなるということを拉致監禁から生還した信者らの報告をもとに熟知しており,まずは「家族から場所を変えて話し合いをしようと誘われても絶対に行かないように」と指導していたものである。いわゆる「偽装脱会」は,拉致されてマンション等に監禁されてしまった後に家族を欺いてでも解放される手段として指導されていたものであり,あくまでも次善の策に過ぎない(甲178号証「岩本徹陳述書」1頁~4頁,甲179号証「K陳述書」3頁~4頁,甲180号証「S陳述書」3頁~5頁,甲181号証「A陳述書」3頁~4頁,甲182号証「伊藤芳朗陳述書」1頁~2頁)。

 ちなみに,対策講座においてマンションについて行くようにとの指導は行っておらず,逆に「逃げるように」との指導を行っていた事実は,被控訴人松永の供述等からも明らかである。即ち,被控訴人松永は,陳述書(乙ロ1号証5頁7行目~)において元信者から聞いた話として,統一教会の反対牧師対策の講義では,「牧師の話を聞くな」「黙って逃げてこい」と教育されていると述べ,主尋問においては,統一教会信者が対策講座で「家族が話合いしようと言えば,それに乗っちゃいけない」,「牧師に会うって言ったら逃げてこい」といった対策を教わると供述している(松永尋問調書26頁20行~27頁1行)。また,被控訴人松永の拉致監禁マニュアル(甲98号証の3)では,「車に乗せる前の話し合い」と題する部分において,「②逃げる トイレ」,「⑤警察(110)が入ると信教の自由を盾に逃げる」との記載がある。このように,統一教会に反対する者達らの側においてさえも,統一教会の対策講座において当時教育されていた指導内容が,「マンションについて行くように」というようなものではなく,まずは「逃げるように」というものであるという認識でいたものである。
98-3 2枚目
<被控訴人松永の拉致監禁マニュアル(甲98号証の3)の一部>

 原判決は,上記①の認定につき,被控訴人■<後藤徹氏の妹>の虚偽供述(■<後藤徹氏の妹>尋問調書3頁,41頁)をそのまま鵜呑みにしたものであって,軽率の誹りを免れない。そもそも,被控訴人■<後藤徹氏の妹>が「統一教会の講座等において,家族らから自宅以外の場所において話合いをすることを求められた場合には,話を聞くふりをし,間違いに気付いたという姿勢をみせて偽装脱会を行い,その後戻るように指示されていた」旨の虚偽供述を行ったのは,自分が拉致されたことを隠すための嘘である。同被控訴人は,原判決も認定する通り,滞在していたマンションからは,当初,外出をすることができない状態にあったものであり(判決書40頁7行),しかも,被控訴人宮村の訪問を受けた際には,押入に籠もって話し合いを拒否していたというのであって(■<後藤徹氏の妹>尋問調書4頁,39頁7行~40頁10行),そのような場所に任意で赴いたはずがないことは明かである。実際,被控訴人■<後藤徹氏の妹>が主張する統一教会からの上記指導,特に「アベルからマンションについて行けという指導を受けていた」旨のあり得ない指示に関して同被控訴人が供述した反対尋問におけるやりとりを見れば,白々しくも矛盾に満ち満ちており,嘘であることは一見して明かである(■<後藤徹氏の妹>尋問調書38頁~43頁)。

 そもそも被控訴人■<後藤徹氏の妹>は,1987年1月か2月に原告と共に大阪の教会に牧師の話を聞きに来て欲しいと母から頼まれた際には,反対牧師の話を聞いて信仰を失うといけないので会う前に逃げるようアベル(注:統一教会内で上司等を意味する用語)から指示を受け,大阪に向かう途中の東京駅で母を騙して逃走したと供述する(乙イ7号証9頁13行~10頁6行,■<後藤徹氏の妹>尋問調書1頁12行~21行)。即ち,反対牧師と会う前に逃げるようにというのが被控訴人■<後藤徹氏の妹>がアベルから教わっていた指導に他ならない。また,被控訴人■<後藤徹氏の妹>は当時は,統一教会の反牧対策において,反対牧師によって拉致監禁されると,注射を打たれ精神病院に連れて行かれたり手錠を掛けられるなどの話を聞いて「私は,反対牧師はとても怖いという強烈な印象を植え付けられていました」と供述するが(乙イ7号証9頁21行~27行),反対牧師に会ったら最後,手錠を掛けられたり精神病院に違法に入院させられるというのであればなおさらのこと,マンションに素直についていくようにとの指導がなされたはずがない。

 ちなみに,被控訴人■<後藤徹氏の妹>よりも先に両親らによって脱会説得を受けた被控訴人■<後藤徹氏の兄>においては,家族らによって押し込まれたワゴン車内で抵抗してもみ合いになり,一旦は車の窓から脱出した事実も判明しているところであり(■<後藤徹氏の兄>主尋問2頁,■<後藤徹氏の兄>反対尋問調書1頁~4頁),これは拉致以外の何ものでもないが,この被控訴人■<後藤徹氏の兄>の場合及びその後の控訴人の場合と同様,被控訴人■<後藤徹氏の妹>においてもマンションに連行される際,被控訴人■<後藤徹氏の兄>及び控訴人の時と同様の強制力が加えられていることは想像に難くない。
 なお,以下の事情からも,統一教会ないし信徒会において「マンションについて行けという指導」が行われていなかったことは明らかである。

ア 身体的危険

 被控訴人宮村及び被控訴人松永が所属する原対協メンバーによる過激な拉致監禁,脱会強要の結果,脱出を図った統一教会信者が重傷を負う事故も複数発生したものであり,例えば,同じ原対協メンバーである高澤守牧師によって拉致監禁されたOKは,1994年2月に監禁先のマンション6階のベランダから脱出を図り,これを妨害しようとした親族ともみになって転落し,瀕死の重傷を負うに至っている(甲20号証の1「高澤尋問調書」50頁10行~51頁13行)。この事件は世界日報にも報道され(甲175号証),控訴人を含む統一教会信者の広く知るところとなった。

甲175
<拉致監禁されたOK氏が監禁先のマンション6階のベランダから脱出を図り,瀕死の重傷を負ったことを報じる新聞記事>


 このように拉致監禁の危険性を熟知している統一教会ないし信徒会において,「マンションについて行くように」などという指導を信者に対して行うはずはなく,また,信者の側においても,任意についていくことはあり得ない。

イ 偽装脱会が容易には成功しないこと

 TUは,1991年4月7日に被控訴人宮村らによって拉致監禁され,同年5月6に偽装脱会を試みるも解放されず,統一教会に対する民事裁判の提起や合同結婚式で結ばれた妻との離婚,胎児の中絶,他の統一教会信者に関する情報提供及び他の監禁された信者に対する脱会強要への協力を強要され,妻を相手とする離婚訴訟を弁護士に委任後に逃走を試みるも警察に捕まって親に引き渡され,監禁から解放されたのは同年12月20日になってからであった。即ち偽装脱会したとしても,統一教会等を被告とする裁判等を起こさない限り,監禁からは解放されないのである。TUはこの体験を元に書籍を書き,光言社から出版しており(甲18号証),同書籍は控訴人を含む多くの統一教会信者らの読むところとなったものである。従って,拉致監禁されたら最後,偽装脱会を試みても簡単には解放されず,統一教会等を被告とする裁判等を起こさない限り監禁から解放されないことを知っている統一教会や信徒会が,「マンションについて行くように」などという指導を信者に対して行うはずはなく,また,信者の側においても,任意についていくことはあり得ない。

 上記統一教会内における指導は一般論ではなく,控訴人自身においても「監禁されないように」との指導を実際に受け,OKの転落事故について新聞で知り(甲175号証),TUの著書等,拉致監禁被害者の体験談を読むなどして,監禁された場合に心身に重大な支障をもらたす危険性があること,偽装脱会は簡単には成功せず,しかも脱会の認定を受けるには統一教会を被告とする裁判を提訴したり,他の信者の情報を開示したり,他の信者に対する拉致監禁,脱会強要に協力しなければならないこと,脱会の認定を受けられなければいつまでも監禁が続いて廃人にされる可能性のあることを認識していたものである(甲178号証「岩本徹陳述書」1頁~4頁,10頁~11頁)。まして,控訴人においては,かつて騙されてホテルの一室に監禁された経験があり,「場所を変えて話し合いをしよう」と言われれば,その先に監禁が待っていることを百も承知であったのであるから,話を聞くふりをし,間違いに気付いたという姿勢をみせて偽装脱会を行おうなどと悠長な気持ちで同行するはずがない。したがって,上記①の認定は明かな誤りである。

(2)控訴人に対する拉致

  原判決は,上記誤った認定①を根拠の一つとして,控訴人が家族に取り囲まれて車に押し込まれ,新潟まで連れて行かれたことを,控訴人が統一教会の指導に基づきあたかも家族らの話を聞くふりをして自分の意思で行ったかのような認定をしたものであり(上記認定②),明かな事実誤認である。
 さらに,原判決は,拉致を否認するに当たって,控訴人が「渋々ではあったものの,自ら立ち上がり,靴を履き,亡■<後藤徹氏の父>らや亡■<後藤徹氏の父>宅において待機をしていたOに付き添われて,玄関から亡■<後藤徹氏の父>宅の外に停められていたワゴン車の方へと向かい,これに乗り込んだ。」(上記認定②)旨認定しているが,これなども口裏合わせをして嘘を吐いてきている被控訴人■<後藤徹氏の兄>らの供述をそのまま採用しているものであり,軽率である。

 原告は,動くことを拒否してその場に座り込んだにもかかわらず,亡■<後藤徹氏の父>及び被控訴人■<後藤徹氏の兄>から両脇を抱えられて引きずるようにして力尽くで玄関を経てワゴン車まで連行されたものであり(岩本尋問調書13頁,75頁~77頁),両脇を抱えられた状態で自分の足で歩いていたとしても,これにより自分の意思でワゴン車に乗ったということにはならないのは言うまでもない。過去にも監禁を経験していた控訴人が自らワゴン車に乗り込んで家族が「話合い」のために用意したとする場所へ移動することに同意するはずがないことは明かである。原審が,何故,控訴人の供述を退け,被控訴人■<後藤徹氏の兄>らの見え透いた口裏合わせの嘘の供述を安易に採用するのか,甚だ疑問というほかない。

 この点に関し,原判決は,「亡■<後藤徹氏の父>宅は閑静な住宅街にあり,周囲に複数の住宅が並んでいることが認められるところ,当時の状況が原告の主張し,供述するとおりであったとすれば,原告において大声で助けを呼ぶなどして周囲に覚知されるような騒動となっていたものとみられるが,そのような事態を窺わせる証跡は存しないから,原告の上記供述部分はたやすく信用することができず,前掲各証拠に照らして採用することができない」(判決書55頁10行~16行)として,控訴人の主張を退けているが,控訴人は拉致された際に大声を出したなどと供述しておらず(岩本尋問調書75頁~77頁),全く独りよがりで無意味な理由付けである。

 一方,控訴人が抵抗したため,被控訴人■<後藤徹氏の兄>らが原告の両腕をかかえ無理矢理ワゴン車に乗車させた事実は,その後の被控訴人等の行動からも明らかである。即ち,仮に控訴人が保谷市の実家にて自らワゴン車に乗るなど恭順の意を示していたのだとしたら,被控訴人らが控訴人を新潟に連行中,控訴人がトイレに行きたいと言った際,サービスエリアに寄ってトイレに行かせても良かったはずである。ところが実際には,控訴人は両脇から腕を抱えるなどして無理矢理連行しない限りワゴン車に乗らなかったからこそ,高速道路でも被控訴人らは控訴人を車外に出さなかったのである。仮にサービスエリアにて控訴人の両腕を両脇から拘束してトイレに行かせるとすれば,控訴人が周囲に助けを求めた際,保谷市の実家と違って周りは見知らぬ者ばかりであるため警察に通報されたり,第三者が控訴人を救助する可能性があり得たし,その隙に控訴人が山中に逃走したなら,被控訴人らとしては車での追跡が困難であるため,控訴人を取り逃がす恐れがあったのである。そうした危険を回避するためにこそ,ポータブルトイレを用いてまで車内で用を足させたのである。

(3) パレスマンション多門及び荻窪プレイスにおける監禁

  原判決は,パレスマンション多門及び荻窪プレイスでの控訴人の置かれた状態につき,「原告は,パレスマンション多門に滞在していた間,自由に外出することを許されず,また,パレスマンション多門には電話機が設置されていなかったため(なお,亡■<後藤徹氏の父>は携帯電話を所持しており,その電話を用いて外部との連絡を取っていた。),合同結婚式に一緒に参加したSはもとより統一教会の関係者の誰に対しても連絡をとることができない状況にあった。」(判決書47頁18行~23行),「原告は,荻窪プレイスに滞在していた間も,自由に外出することを許されず,統一教会の関係者の誰に対しても連絡をとることができない状態にあった。」(同49頁3行~5行)と認定しているにもかかわらず,誤った上記認定①を引用し,上記認定③記載の理由により,両マンションにおける監禁の事実及び違法性を否定している。

 上記「自由に外出することを許されず」,「合同結婚式に一緒に参加したSはもとより統一教会の関係者の誰に対しても連絡をとることができない」という状況は監禁以外の何ものでもない。「自由に外出することを許されず」とあるが,この間,控訴人は被控訴人らの許可を得て外出をしたことは一度もなく,「連絡をとることができない」とある通り,同様に許可を得て外部の誰とも連絡をしたことなど一度もないのである。

 しかるに,原判決は「本件証拠上,その間を通じて,被告■<後藤徹氏の兄>らに対して各滞在場所から自身を退出させるよう求めたり,機会をねらって各滞在場所からの退出を試みたり,各移動に際して抵抗を試みたりしたことが窺われないことからしても,原告が自身の置かれた状況を一応容認していたことが窺われる」(上記認定③)として,違法性を否認しているのである。控訴人が上記両マンション滞在中に「偽装脱会」をしていたことについては,亡■<後藤徹氏の父>及び被控訴人■<後藤徹氏の兄>ら監禁者側において当時から既に認識していたことであり(判決書47頁26行~48頁2行,■<後藤徹氏の兄>反対尋問調書32頁18行~22行),争いのない事実である。

 控訴人が偽装脱会中に逃走を図り,抵抗を試みるなどすれば,偽装脱会が露見して監禁からの解放は望めなくなることから,あくまでも表面上は従順を装うのであり,これを捉えて「自身の置かれた状況を一応容認していた」などとは呆れた論理であると言わざるを得ない。原判決が上記認定する通り,外出も外部連絡も一切できない状況にある,すなわち監禁されているからこそ,控訴人は偽装脱会による解放を企図したものであり,控訴人が偽装脱会をしていた事実こそが監禁を裏付ける何よりの証左なのである。監禁から解放されるために偽装脱会をするのは,控訴人固有の特異な行動ではなく,他の大勢の拉致監禁被害信者らが試みてきた行動であり,前記の通り,統一教会内の拉致監禁対策においても指導されていたものである。かかる偽装脱会の事実を逆手に取って真逆の認定をするなど到底許されるものではない。ちなみに,富澤裕子が高澤守等を訴えた本件同種事件においては,1998年3月9日頃に被控訴人宮村の脱会強要により富澤は偽装脱会を行い,同年9月に解放されるまでの間,偽装脱会を継続しているが,この間の身柄拘束に関しても鳥取地裁は高澤等の行為の違法性を認めており,偽装脱会により「自身の置かれた状況を一応容認していた」などという理由によって違法性を否定するなどしていない(甲53号証の1,2)。
鳥取襲撃
<富澤裕子が高澤守等を訴えた事件について報じる宗教新聞の記事>

 なお,原判決は「前記1(1)ナ(イ)の原告の供述内容からして,原告がパレスマンション多門及び荻窪プレイスに滞在している間,各監禁場所の出入り口の施錠の状況に強い関心を寄せていなかったことが窺われること,同ソ(ア)の事実からして,原告がパレスマンション多門から亡■<後藤徹氏の父>宅への移動の機会を捉えて逃走等を行おうとする意図を全く有していなかったことが窺われること等からしても,明らかである。」(上記認定③)とも判示する。

 まず,「前記1(1)ナ(イ)の原告の供述内容」とは,「上記告訴に係る各被疑事件の捜査段階において,原告は,取調官に対し,パレスマンション多門については,窓が内側から開けられない状態であったので,玄関も内側から開けられないような鍵が付いているのかと思っていた旨を供述し,また,荻窪プレイスについては,トイレに行った際に家族の隙を見てカーテンを払って玄関を見たところ,番号の付いた鍵が見えた感じがした旨を供述した。」(判決書54頁24行~56頁3行)を指すものであるが,これなどは刑事告訴事件を潰す意図を持った捜査機関(被疑者らに対する家宅捜索も身柄拘束も行わなかった。)が調書作成過程において巧みに歪曲した内容を控訴人が見落としたものである(岩本尋問調書79頁4行~80頁20行,166頁7行~15行)。また,パレスマンション多門から亡■<後藤徹氏の父>宅への移動の機会を捉えて逃走等を行おうとしなかったのは,当時,控訴人においては偽装脱会中であったことによるものであるに過ぎない。すなわち,控訴人においては,偽装脱会の結果,被控訴人らによる監禁が緩むなどして確実に逃走できる機会が到来するのを窺っていたものであり,下手に逃走を試みて失敗し,偽装脱会が露見して監禁が更に厳重になる危険を冒さなかったに過ぎない。監禁された者のこうした心理は,TUもまた陳述書において述べているところであり(甲50号証9頁20行~22行),いずれにせよ,外出及び外部との連絡不能という客観的な事実を余りにも軽視した原判決の認定は不当であることは明かである。


つづく


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2014-06-16(Mon)
 

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妹に騙されていた 

控訴理由、一つ一つ納得です。
このように説明をされて初めて、一審判決のいいかげんさが分かりました。

妹の供述。
「統一教会の講座等において,家族らから自宅以外の場所において話合いをすることを求められた場合には,話を聞くふりをし,間違いに気付いたという姿勢をみせて偽装脱会を行い,その後戻るように指示されていた」

今にして思えば、この供述は実に巧妙ですね。
食口が聞いても「ふん、ふん」と頷いてしまいます。
というのも、説得者を敵のように話しているし、偽装脱会を認めているので、妹は正直に話しているなあ、とつい錯覚させられてしまいます。

でも、これは「逃げようとしなかった」というウソをいかにも本当のように粉飾するためのものだったのですね。
まんまとやられた~。
ちっくしょーーー!


<刑事告訴事件を潰す意図を持った捜査機関(被疑者らに対する家宅捜索も身柄拘束も行わなかった)>

拉致監禁の訴えを潰すために、検察は、監禁被疑者らを調べることをしなかった…。
もし、当時のマンションのドアや窓、壁、畳などを警察が調べていたら、動かし難い物証があっただろうから、こんなにややこしいことにはならかなったはずだ。

改めて、憤りがこみ上げてきます。

民事での「逆転に次ぐ逆転」を心から祈念します。

2014-06-17 18:04 | みんな | URL   [ 編集 ]

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拉致監禁被害者後藤徹氏の裁判を支援する会
世話人:宿谷麻子 <2012年10月15日逝去>
(強制脱会者)
世話人:koyomi
(強制脱会者)
世話人:小川寿夫
(自主脱会者)
世話人:yama
(強制脱会説得体験者。教会員)

連絡先:gotosaiban-contactus@yahoo.co.jp

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